Macで動画編集をしたことがある方ならProResという名前を一度は目にしたことがあるのではないだろうか。
2021年10月に発売されたiPhone 13 Proでは、ProResフォーマットで動画撮影ができるようになったことも動画編集になじみのない人でもProResという名前を目にするきっかけとなった。
この記事では、iPhone 13 Proにも搭載されたProResフォーマットについてその特長や種類を解説すると共に、ProResを使用すべき理由について説明してみたい。
Apple ProResとは
ProResはAppleが開発した高画質で映像を圧縮できるコーデックの名前である。
正式名称はApple ProRes(プロレズ)という。
ProResは、限りなく忠実に再現される色と低い圧縮率が特長です。そのまま放送できるクオリティのコンテンツを、どこにいても撮影、編集、配信できるようにします。そんなProResを使ったプロジェクトを、iPhone上ですべて完結できるようになりました。
Apple
ProResの特徴
ProResは高画質で映像を記録できると同時にデコードにも適したフォーマットであるため、高画質な映像をスムーズに編集できる特徴がある。
動画編集時に適したコーデックであることから「中間コーデック」と呼ばれており、視聴者が最終的な動画を見るのに適したフォーマットではない。
動画の最終的な書き出しフォーマットとして普及しているH.264などに比べ、ProResはデコードが容易であり、高画質な映像をスムーズに動画編集できる。
短所としては、他の圧縮コーデックに比べてファイルサイズが非常に大きくなることが挙げられる。
ProResは圧縮をあまり強くかけていない分、編集や再生時にデコードする負荷が低くスムーズに編集できるが、ファイルサイズが大きくなるということだ。
ProResの種類
ProResにはビットレートや画質ごとにいくつか種類がある。代表的なものをビットレートの高い順に上げると以下のようになる。
- Apple ProRes 4444 XQ
- Apple ProRes 4444
- Apple ProRes 422 HQ
- Apple ProRes 422
- Apple ProRes 422 LT
- Apple ProRes 422 Proxy
なお、iPhone 13 Proの標準カメラアプリを使用すると、Apple ProRes 422 HQで動画撮影ができるようになる。
Apple ProRes 422 HQはProResの種類の中で代表的なものである。
iPhone 13 ProとProRes
iPhone 13 ProではProResで動画をコーデックできるようになった。
256GB以上のストレージモデルでは4KでProRes HQでエンコードできる。128GBのストレージモデルでは1080p(フルHD)までの解像度に制限されている。
ProResフォーマットを使用すべき理由
先に述べた通り、ProResは動画編集に適したコーデックである。
そのため、カラーグレーディングなどの高度な動画編集をしない場合には適さないフォーマットである。自分で撮影して自分だけが見る場合や、簡単な編集をしてSNSなどに投稿するのには向いていない。
また、Appleが開発したフォーマットであるため、WindowsなどのシステムではハードウェアがProResのデコードに最適化されておらず、ProResの力を発揮できない場合が多い。
つまり、ProResを使うべきなのはMac上で高度な動画編集をする人となる。
iPhone 13 Proのカメラで最高画質で記録して、Mac上で高度な動画編集をする人には大きな可能性を与えてくれるだろう。
実際にProResを使って動画編集をした感想
実際にiPhone 13 Proで撮影されたProRes素材をMacの動画編集ソフトFinal Cut Proを使って動画編集してみた。
今まで使用してきたH.264やH.265などの映像よりも確かにスムーズに編集できた。
また、複雑なカラーグレーディングを施しても破綻することなく豊富なデータ量を感じさせるものだった。
ProRes HQを選ぶと、1分程度の4K 24fpsの動画で4.5GBとファイルサイズが膨大になるため、ハイエンドなハードウェアが要求されるプロ向けのフォーマットだと思った。
個人的には、iPhoneではiPhone 12 Proから10-bit 4:2:2で動画撮影ができるようになっており、カラーグレーディングのしやすさなどはProResを使用しなくても、10-bit 4:2:2のHEVC(H.265)コーデックで十分だと思っている。
そもそも、iPhoneで業務用の作業をするというケースは稀であり、AppleがiPhone 13 ProにProResを搭載したのは、Apple独自のプロ用コーデックをiPhone 13 “Pro”に搭載してやるという本気度の宣言だったように思う。