芸術家、音楽家、スポーツ選手などが書いたエッセイ、コラムはふつうの人とは違う視点から書かれてあるため、読むと刺激的でおもしろい。
日本の現在活動中のアーティストが書いたエッセイで、とくにおすすめなのは芸術家の大竹伸朗の本だ。
大竹伸朗氏のエッセイは、芸術家だけが経験しうる強烈な経歴、移動、交流、夢、価値観が展開されている。
ふつうのエッセイに飽きた人、ふだんは本は読まない人にもおすすめのエッセイ集だ。
大竹伸朗について
アーティストとしての大竹伸朗については別記事で書いたので、詳しくはそちらをご覧いただきたい。
関連記事:世界的芸術家 大竹伸朗氏のオフィシャル・ウェブサイト
大竹伸朗のエッセイ集や紀行文のまとめ
現在までに刊行されている大竹伸朗氏の著作をまとめてみた。
私は既にここにあるものは読んだ。個人的なおすすめ度順に並べてみたので、読書の参考にしていただきたい。
既にそこにあるもの(1999)
ちくま文庫発行の445ページの本書は、大竹伸朗の著作入門としてはいちばん向いている。大竹伸朗のアーティストとしての考え方、ものごとの捉え方は常識を覆していく。世界的な芸術家の目を通して見える世界が広がっている名作。
テレピン月日(2002)
単行本の本書はやや大判で、まず表紙の雰囲気がいい。中にも作品が数点収録されてある。刊行年が近いこともあり、『既にそこにあるもの』を延長したところにある。
この本の最後に収録されている「ラッセル」というエッセイが好きだ。まだ無名だった大竹伸朗が単身イギリスに飛び込んでいったときのことが書かれてある。そこで大竹伸朗氏は実に多くの人、もの、価値観に出会う。
自分がそれまで他者の目や価値観で物事を見ていたのかといったことを、思い知らされたことが衝撃であったのだ。また世の中得てして本物は、そんな見えにくい仕組まれたもどかしいカラクリの中にサンショウウオのようにひっそりと不気味に潜んでいたりするものだ。
ビ(2013)
直島、カッセル、韓国など、世界中の展覧会で作品を作っていく際に記録。日本の外から、中から物事をみる視点が刺激的。
ネオンと絵具箱(2006)
若き大竹伸朗氏が北海道~ロンドン~直島へと移動していく。とくにロンドンでの出会いと交友に感動する。
見えない音、聴こえない絵(2008)
宇和島、東京、別海町を結ぶ三角形のなかで考えられたこと。
唐突に「理不尽」という単語が頭に浮かんだ。(中略)「頭上に漂い続ける道理のない何か」が自分にとって制作衝動に大きく関係しているらしい。(中略)その雲に押しつぶされないよう、そいつに吹き飛ばされぬようバランスを保つ唯一の方法、それが自分にとってモノを創り続けることなのではないか?「赤い理不尽」
人それぞれの内側にはさまざまな形を成す未完成の「地形」があるのではないか(中略)たとえそれが未完の地図で終わったとしても、何らかの表現手段を手掛かりに内側に感じる「地形」を可能な限り歩き回り、できることならおぼろげにせよ炙り出る「地図」を一瞬でも見てみたい、そんな思いが強い。「あとがき」
大竹伸朗の最近の著作活動
月刊『新潮』にて「見えない音、聴こえない絵」を連載中。
大竹伸朗の最近の活動については、オフィシャルページでアナウンスされている。
大竹伸朗 | OHTAKE SHINRO – OFFICIAL WEBSITE | NEWS
最後に
「日本」「芸術家」「現在活動中」に当てはまる存在で、本当におもしろいと思える人は数えるほどしかいない。大竹伸朗氏は現在も精力的に作品を発表している。
芸術作品はもちろんだが、エッセイや著作もまた、だれにもつくれない地平を切り拓いている。
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