開高健『オーパ!』旅好き・釣り好きが読むべき傑作シリーズ

,

何事であれ、ブラジルでは驚いたり感嘆したりするとき、「オーパ!」という

小説家、ノンフィクション作家として知られる開高健(1930〜1989)。

開高健が書いた数々の作品のなかでも、『オーパ!』シリーズは日本の紀行文、ノンフィクションの傑作だ。

『オーパ!』シリーズには3つの魅力がある。

  1. 釣りの魅力……元祖「怪魚ハンター」としてのスリルある釣り文学
  2. 旅の魅力……普通の紀行文には載っていない世界の秘境について書かれてある
  3. 写真の魅力……写真家 高橋昇による何百枚もの写真を観ると当時の旅の臨場感が味わえる

開高健の深い思考の糸をたどり、何百枚もの写真を目にするうちに、実際に旅をした気分に浸れる。そして、旅や釣りがしたくなってくる。これほどまでに読者を冒険へと誘ってくる作品は読んだことがない。

『オーパ!』の冒頭で開高健は書いている。

何かの事情があって野外へ出られない人、海外へいけない人、鳥獣虫魚の話の好きな人、人間や議論に絶望した人、雨の日の釣師……すべて書斎にいるときの私に似た人たちのために

『オーパ!』シリーズの概要とおすすめ

『オーパ !』シリーズは1978年〜1989年にかけて数冊に分けて刊行された。その後、文庫化され、最近では電子書籍化されて長いあいだ読者に読まれてきた。

私が持っているのは集英社文庫版で4冊ある。それぞれの梗概を載せておく。

『オーパ!』

おすすめ度:⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

世界最大の流域、褐色の甘い海、史前的世界を秘める大河アマゾン。その水底に棲む名、怪、珍、奇さまざまの魚たち。殺し屋ピラーにゃ。跳躍するトクナレ。疲れを知らぬファイター黄金魚(ドラド)。そして淡水最大の巨魚ピラルクー。驚き(オーパ)を求めてさまようこと60日、16,000キロ。

『オーパ、オーパ!! アラスカ篇 カリフォルニア・カナダ篇』

おすすめ度:⭐️⭐️⭐️⭐️

ベーリング海の孤島セント・ジョージ。荒波に翻弄される小舟から、小説家開高健は釣糸を垂れる。待つこと10日。豊饒の海に潮満ち、剛竿が悲鳴をあげる! 北海の野獣オヒョウとの格闘が始まった(アラスカ篇)。さらには北米の砂漠、ミード湖の名魚ブラックバス、洒落者ストライパー等々。カナダの大河にひそむ珍味キャビアの母にして太古を生きるスタージョンに挑む(カリフォルニア・カナダ篇)。

『オーパ、オーパ!! アラスカ至上篇 コスタリカ篇』

おすすめ度:⭐️⭐️⭐️

かつて砂金堀師が狂奔したアラスカの河岸に、世界中の釣師が、巨大なキングサーモンを狙ってひしめく。小説家はバック・ペイン(背痛)をおして氷寒の生と死の円環の中に、輝く虚無となって立つ(アラスカ至上篇)。中米のジャングルの河面を銀色の巨体が破る。疲れを知らぬ河の主、ターポン。剛竿がしなり、リールが悲鳴をあげる――。小説家との長い長い格闘が始まった(コスタリカ篇)。

『オーパ、オーパ!! モンゴル・中国篇 スリランカ篇』

おすすめ度:⭐️⭐️⭐️

原始の静寂の湖面に白波が走る! 12メートルの巨魚か怪獣か!? 小説家は書斎の闇を抜け出し、幻の魚イトウをおってモンゴル奥地へ、そして空前の巨魚を求めて中国最深部へ…(モンゴル・中国篇)。静澄。豪奢。絢爛。沈痛。…とてつもない質と量の宝石が小説家の眼前にひろがる。熱帯の劫初の煌めきが、眼を射る(スリランカ篇)。“オーパ・シリーズ”完結。

『オーパ!』シリーズの購入ガイド

いまから『オーパ!』シリーズを読む人には、電子書籍版もしくは文庫版の『オーパ!』を最初の一冊としておすすめする。

2冊目に読むとすれば、『アラスカ至上篇 コスタリカ篇』文庫版をおすすめする。

小学館の「開高健 電子全集」は写真が収録されていないため、写真が何百枚も載っている文庫版がおすすめだ。

最後に

「釣り」+「旅」+「写真」の3つの要素によって『オーパ!』シリーズは日本の紀行文、いやノンフィクションのなかで異色を放っている。

まだ『オーパ!』シリーズを読んでいない人は、ぜひ電子書籍版の『オーパ!』からシリーズを読んでいくことをおすすめしたい。

関連記事:

開高健と怪魚ハンター武石憲貴のドラド釣りに学ぶ釣りの醍醐味

個性的な日本の小説とエッセイおすすめ10冊