死は避けられない。
だから、死を受け入れるところから始めて、どんな価値観を選ぶかが問題だ。
幸せになるには苦しみが避けられない。
であれば、問いかけるべきは「どうやって苦しみから逃れるか」ではなく、「何のために苦しむのか」である。
『その「決断」がすべてを解決する』マーク・マンソン 著、大浦 千鶴子 訳
(三笠書房、2018年4月)
ミレニアル世代に向けて
ミレニアル世代は育った過程で気づかぬうちに、自分が特別であると思い込み、特別でなければならないとを刷り込まれる。
ミレニアル世代とは1981年以降に生まれ、20世紀の世紀末に成年に達する世代。1980年〜2000年ごろに生まれた世代のこと。
SNSを通じて他者と比較しては「もっと特別な存在にならなくちゃ」という意識がデフォルトになっている若者たち。
マーク・マンソン(1984年生まれ)はミレニアル世代に向けてこの本を書き、ベストセラーになった。
苦しみへの手引書
この本には成功するための方法や、偉大になるための方法は書かれていない。それとは反対に、「苦しみへの手引書」である。
この本は、どうやって獲得したり成し遂げたりするかではなく、むしろ、どうやって失ったり手放したりするかを教える。
マーク・マンソンが語るのは「責任」「不確かさ」「失敗」「拒否」「覚悟」という5つの価値観についてだ。
この5つの価値観はネガティブであり、人びとから避けられている。しかし、避けずに受け入れること。死を受け入れるのとおなじように、ネガティブな価値観を選び取ること。そこからしか、人は生きはじめない。
死を受け入れろ、ミレニアル世代
ミレニアル世代とSNSが切っても切れない関係にあるとするなら、ミレニアル世代の父親はスマホ(iPhone)を広めたスティーブ・ジョブズかもしれない。
スティーブ・ジョブズも「明日死ぬとしたら」という恐怖を受け入れたことが原動力となった。そして歴史に残る発明を世にのこした。
SNSには「死」や「苦しみ」は投稿されない。人の苦しみに「いいね」はつかない。
死や苦しみを受け入れたとき、そこから見える景色こそがほんとうに美しいのだとしたら…。
ミレニアル世代に本当に必要なのは、死を受け入れたものだけに見える景色なのかもしれない。