無料で読める坂口安吾のおすすめ3作品

若いころ、坂口安吾をよく読んだ。死後50年経過し著作権が消滅したため、青空文庫やAmazon Kindleで無料で作品が公開されている。無料で作品が読めるのだから、若い世代も古典にアクセスしやすくなっている。

坂口安吾は常識をくつがえす力強い文章で世間を挑発してきた。安吾の「気骨」なスタイルはいまも新鮮だ。

この記事では、無料で読める坂口安吾のおすすめ3冊を引用とともにご紹介したい

どの作品も数十ページの短い作品だから、スマホやKindleなどで気軽に読んでいただきたい。

青鬼の褌を洗う女

坂口安吾は女をよく描いた。男から見た女ではなく、女になりきって書いた。

「青鬼の褌を洗う女」は安吾の女を主人公にした短編小説。戦後の世のなかがまだ混沌としていたときに、安吾はこんなことを書いていた。いつも常識に対して真っ向から切り込んでいく。安吾節が炸裂する一編。

男の人は、大学生ぐらいのチンピラ共まで、まるで自分が世界を動かす心棒ででもあるような途方もないウヌボレに憑かれているから、戦争だ、敗戦だ、民主主義だ、悲憤慷慨、熱狂協力、ケンケンガクガク、力みかえって大変な騒ぎだけれども、私たちは世界のことは人が動かしてくれるものだときめているから勝手にまかせて、世相の移り変りには風馬耳、その時々の愉しみを見つけて滑りこむ。日頃オサンドンの訓練、良妻賢母、小笠原流、窮屈の極点に痛めつけられているから単純な遊びでも御満悦で、戦争の真最中でも困らない。国賊などと呼ばれても平チャラで日劇かなんかグルリと取りまいて三時間五時間立ちン坊をして、ひどく退屈だけれども、退屈でも面白いのである。私は退屈というものは案外ほんとに面白いんじゃないかと思っている。だってほかに、ほんとに面白いという何かがあるのだろうか。

ほんとうに醜い人間などいるはずのないもので、美というものは常に停止して在るのじゃなくて、どんなものでも、ある瞬間に美しかったり、醜かったりするものだ。私にとって、寝室の久須美は常に可愛く、美しかった。

すべてが、なんて退屈だろう。しかし、なぜ、こんなに、なつかしいのだろう。

青空文庫 図書カード:青鬼の褌を洗う女

堕落論

坂口安吾の代表作。

人間は堕落するもの。堕落し切ったところから安吾の戦後はスタートする。

堕ちる道を堕ちきることによって、自分自身を発見し、救わなければならない。

青空文庫 図書カード:堕落論

日本文化私観

安吾の「本物」を追求する姿勢はここでも健在。「真に美なる物」とはなんなのか。

見たところのスマートだけでは、真に美なる物とはなり得ない。すべては、実質の問題だ。美しさのための美しさは素直でなく、結局、本当の物ではないのである。要するに、空虚なのだ。そうして、空虚なものは、その真実のものによって人を打つことは決してなく、詮ずるところ、有っても無くても構わない代物である。法隆寺も平等院も焼けてしまって一向に困らぬ。必要ならば、法隆寺をとりこわして停車場をつくるがいい。我が民族の光輝ある文化や伝統は、そのことによって決して亡びはしないのである。

青空文庫 図書カード:日本文化私観