要約・レビュー『STOIC 人生の教科書ストイシズム』ブリタニー・ポラット

・ストイシズムを実践していると、「日々の生活から負の感情が減り、活力を強く実感するようになる」と研究で実証されている。

・人生は、何をもってよい人生となるのか?古代のストア哲学者たちは、その答えは「美徳」であるとじていた。要は内面的な素晴らしさのことだ。自分の内面の糧となるものものの見方、品性、道徳的判断の充実に意識を向けると、深淵で濃密で永続的な幸福感のスイッチが入る。また、どれほどじがたいことが自分の身に起きても、美徳に則した行動をとっていれば、平静と目的を見出すことができる。この理想を現実にするには時間と労力を要するが、忍耐と努力によって、誰もが必ず実現できる。美徳を味気ないものや拘束的なものと思うのは大間違いで、それは人間が成しえることの頂点を表す。

・ストイシズムの4つの美徳:知恵(うわべにとらわれない力)、正義(他人に思いやりを持つ力)、勇気(苦難に立ち向かう力)、節制(衝動を抑える力)

・要するに、物質面での条件にかかわらず、人は高潔であれば満ち足りた人生を送れるというのだ。ストア派は、よい人生を送るために必要なものはよい人格だけだという独自の立場をとっていた

・セネカによると、ストイックな生き方とは、自らの価値観や条に合致する行動をとり、自らの美徳に従って生きることだ。

・ストイシズムの知恵は、次の2つを肝に銘じるよう説く。1つは、好きで間違う人はいないということ。間違ったことをしている人も、自分は正しいことをしていると思っている。そしてもう1つは、他者が何をしようとも、自分は自分で満足を見出せるということだ。

・持っていないものよりも、持っているものに目を向けなさい。持っているもののなかで最良のものを選び、もしそれがなかったらどれほど強く追い求めていたかと考えよ。『自省録』

・この出来事は、あなたの公正さ、寛容さ、穏やかさ、良識、浅はかな意見や嘘に動じない心の妨げになるだろうか。それは、謙虚さや自由をはじめとする、あなたの本質が獲得し、あなた固有のものとして存在する性質のすべての妨げになるだろうか。

苛立ちを招くことが起きるたびに、この原則に立ち返ることを思い出せ。「これは不運ではない。これを高潔に耐えることは幸運なのだ」と。『自省録』

・賢者は何をするにも理由を重視し、結果に関心を示さない。始まりは自分で決められるが、結果を決めるのは運だ。しかし、わたしは運に判決を下させるつもりはない。『ルキリウスへの手紙』

・わたしたちの心をかき乱すのは、他者の行動ではない。なぜなら他者の行動の根拠は、彼らを支配している道義のなかにあるからだ。わたしたちの心をかき乱すのは、自分の意見にほかならない。そうした意見は捨て去り、他者の行動を嘆かわしいものとみなす判断を却下すると決意せよ。そうすれば、怒りは消え去る。『自省録』

・自分の意志を貫いて生きる人は自由であり、強制されず、妨害されず、力で支配されることもなく、選択を妨げられることもない。自ら欲して目的を成し遂げ、嫌悪するものには巻き込まれない。『語録』

・人は快楽に身を投じ、それが当たり前になってしまうと、快楽なしでは何もできなくなる。これほど悲惨なことはない。

かつては不要だったものが、なくてはならないものになってしまったのだから。それではもう快楽の奴隷であり、快楽を楽しんでいない。『ルキリウスへの手紙』

・行動は怠惰にするな。会話の筋道を失うな。思考をさまよわせるな。魂を内なる議論に浸らせたり、外に噴出させたりするな。気晴らしの時間がないほど日々を忙しくするな。『自省録』

・望むものすべてを手に入れることは誰にもできない。しかし、自分にないものをほしがらず、自分にもたらされたものを喜んで活用することはできる。『ルキリウスへの手紙』

・「ええ」と言ってあなたは続ける。「ですが、狡猾な人のほうが多くを手にしている」それはどういう面で?「金銭において」

金銭面に関して狡猾な人があなたに勝っているのは、彼らはこびへつらい、恥知らずなことをし、夜も眠らず金銭を追い求めているからだ。よって、それはいささかも驚くことではない。目を向けるべきは、誠実さや思慮深さの面で彼らのほうが多くを手にしているかだ。これらに関しては事情は変わってくるはずだ。あなたのほうが勝っている部分では、あなたのほうが多くを手にしているのだから。『語録』(欲に駆られて行動すると、本当の意味での価値がないもの(欲を満たす何か)を手にする代わりに、本当の意味での価値があるもの(品性)を失う。)

・善良で優秀な人がすることは、体裁のためではなく、正しいことを行うためだということを知らないのか?『語録』(美徳にかなう行動は、多くの場合、誰も見ていないときにこそ行われる。エピクテトスをはじめとする偉大なストア哲学者たちは、正しい行いをすることはそれ自体に価値があり、たとえその場に喝采をくれる人がいなくても行うべきだと教えてくれる。何かをして称賛を得たいという誘惑に駆られたときは、周囲を感心させるためや喜ばせるためではなく、自分の品性を守るために行動するというストイシズムの教えを思い出すといい。美徳はそれ自体が報酬である。)

・「幸運だ」というのは自分で自分によい運を与えたという意味で、よい運とは、魂のよい性質、よい感情、よい行動のことだ。『自省録』

・できるかぎり感謝の気持ちを持つよう努めるべきだ。他者に対する正義がそうであるのと同様、感謝は自分のためになる。感謝はその大半が自分に戻ってくる。他者に利することをして、利を得なかった人はいない。『ルキリウスへの手紙』

・哲学が提唱するのは質素な生活であり、苦行ではない。また、質素でありながらきちんとした生活を営むことは十分に可能だ。これがわたしが認める中庸だ。人生は、聖人の生き方と世間一般の生き方のちょうどいい中間をとるべきだ。誰もが称賛し、理解もできる生き方をするべきだ。『ルキリウスへの手紙』

・自分の内側に目を向けよ。内側は善の泉であり、あなたがつねに掘るなら、それはつねに湧き出るだろう。『自省録』(幸福、充実感、自由は、どれも自分の内側に目を向けたら得られるものだ。しかも、それらの供給に終わりはない。)

重要参考文献

エピクテトス『語録』【始祖にして原点】

マルクス・アウレリウス『自省録』【エピクテトスを学び政治的にもストアの頂点】

セネカ『ルキリウスへの手紙』【世俗的で中庸で最も俗人的だがその分わかりやすい】