これは名著だった。
机上の理論ではなく、実践することの重要性と方法が語られている。
古くさい企業理論を真似して多大な時間と金を浪費する前に、『リーン・スタートアップ』を読むことをおすすめしたい。
『リーン・スタートアップ』エリック・リース著、井口耕二訳、日経BP社(2012年)
リーン・スタートアップとは
『リーン・スタートアップ』の肝となるシステムは下図で表現される。
「実用最小限 の製品」を構築し、計測し、学習する。この一連の流れを何度も繰り返し、チューニングしていくこと。そしてサイクルタイムを速めていくこと。
本書には出てこないが、この考えもトヨタ生産方式の「カイゼン(改善)」と同じである。
サイクルタイムが極端に短い、顧客の望みを中心とする(顧客からの望みを聞くわけではない)、意識決定を科学的に行うといった特徴を持つ方法である。
「はじめに」
本書の副題にある通り「ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす」。これは「トヨタ生産方式」の肝となる考えの一つ。
リーン・スタートアップの5原則
- アントレプレナーはあらゆるところにいる
- 起業とはマネジメントである
- 検証による学び
- 構築―計測―学習
- 革新会計
『リーン・スタートアップ』は現代の起業においては「不確実性」が大きく、完璧な計画は時間がかかるだけで意味をなさない、という状況を前提にしているところが良い。
失敗することは当然だとした上で、いかに「学び」を得ることを目的に実験を繰り返すか。
「不確実性」を前提に理論を構築していくところが、従来までの企業理論とは異なる。
トヨタ生産方式に学んだ『リーン・スタートアップ』
『トヨタ生産方式』大野耐一著、ダイヤモンド社(1978年)
『トヨタ生産方式』を知っていれば、『リーン・スタートアップ』の考えを理解することはむずかしくない。
「トヨタ生産システム」というOSをアントレプレナー向けの「起業」というプラットフォームに移殖したものだからだ。
ビジネスとは広義の「ものづくり」だとすれば、トヨタが生み出した生産方式を理解することはあらゆる「ビジネスマン」に役立つ。
まとめ
現代において、起業や社内事業などに興味のある方は、絶対に読んだ方がいいという名著だった。
コンパスを持たずに不確実な現代に飛び込むのではなく、この本を読んでから起業を考えると無駄な時間や金を抑えられる。