『ファクトフルネス』とは?要約と感想 ハンス・ロスリング著

『ファクトフルネス』はデータに基づいて世界を認識することの重要性を説いた本。

著者のハンス・ロスリングはスウェーデン出身の医師、公衆衛生学者、かつTEDトークの常連スピーカー。2017年に亡くなった。

2018年に出版されたため、残念ながら著者ハンス・ロスリングの遺作となった。

ファクトフルネスとは

ファクトフルネスとは、データに基づいて事実を正しく認識することだ。

そのために本書ではまず最初に古くなった知識をアップデートしてくれる。次に、誤った知識の原因が「ドラマチックな本能」にあることを突き止める。そして最後に、ドラマチックな本能を抑える方法を学び世界を正しく認識する知識と方法を学ぶ。

前半の現在の世界に関する知識のアップデートでは、世界の知られていない事実がクイズ形式で説明される。

ほとんどの人が想像するほど低所得国の暮らしは苦しくないし、人口も多くはない。世界が分断され世界の大半の人が惨めで困窮した生活を送っているというのは幻想でしかない。はっきり言って完全な勘違いだ。

第3章

我々は無意識にドラマチックな世界の見方をしている。そのわけは10の本能的な思考が関わっており、それを抑えるには以下の覚書が役に立つ。

ファクトフルネスの大まかなルール

  1. 分断本能を抑えるには
    大半の人がどこにいるかを探そう
  2. ネガティブ本能を抑えるには
    悪いニュースのほうが広まりやすいと覚えておこう
  3. 直線本能を抑えるには
    直線はいつかは曲がることを知ろう
  4. 恐怖本能を抑えるには
    リスクを計算しよう
  5. 過大視本能を抑えるには
    数字を比較しよう
  6. パターン化本能を抑えるには
    分類を疑おう
  7. 宿命本能を抑えるには
    ゆっくりとした変化でも変化していることを心に留めよう
  8. 単純化本能を抑えるには
    ひとつの知識がすべてに応用できないことを覚えておこう
  9. 犯人捜し本能を抑えるには
    誰かを責めても問題は解決しないと肝に銘じよう
  10. 焦り本能を抑えるには
    小さな一歩を重ねよう

本書で重要となる「正しいデータ」は著者が創立したGapminderのウェブサイトに掲載されており、誰でも無料で見ることができる。

World Health Chart | Gapminder

また、著者はTEDトークでもその知識を共有しており、こちらも必見だ。

The best Hans Rosling talks you’ve ever seen | TED Talks

『ファクトフルネス』を読んだ感想

ジャンル的にはビジネス書・実用書にされているが、正しい分類ではない。本書は世界のファクトブックにように読者の知識をアップデートし、なぜ我々が誤った知識を持っているのか、そしてそれを防ぐ方法を学ぶことができる本だ。

訳書の副題は「10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」となっている。原書の副題は「Ten Reasons We’re Wrong About the World – and Why Things Are Better Than You Think」となっていて、後半の訳されていない部分「なぜ世界はあなたが思っているよりも良くなっているか」という部分が実は重要だと思う。

世界は良くなっている」という事実は、本書の中で繰り返しデータに基づいて説明される。前向きに正しく知識をアップデートしてくれる本書のようなメディアは貴重であり、また非常にためになる一冊だった。TEDトークを見てもわかるが、著者のハンス・ロスリングは世界に正しい知識を広めることに生涯を捧げた人だったようだ。

なお、私は本書をAudibleで読んだが、Audibleで本書を読むことはおすすめしない。図表が多く、章ごとにまとめもあるため、本来はページを行ったり来たりして読むことを想定してある。Audibleでも理解はできるが、より簡単にページを行き来して読みたい人には書籍版をおすすめしたい。