2019年末にパリに行った際に、ずっと行きたかった本屋「シェイクスピア・アンド・カンパニー」を訪ねてみた。
オーナーのシルヴィア・ビーチを筆頭に、常連としてヘミングウェイ、ガートルード・スタイン、フィッツジェラルド、エズラ・パウンドなどが訪れた。またギンズバーグやバロウズなどビート・ジェネレーションとも交流があり、ヘンリー・ミラーの名前もある。
ちょうどヘミングウェイが文学修行をしたパリ時代を綴った『移動祝祭日』を読んでいて、パリとこのシェイクスピア・アンド・カンパニーに行く人はぜひ『移動祝祭日』を読んでみていただきたい。
その頃は本を買う金にも事欠いていた。本は、オデオン通り十二番地でシルヴィア・ビーチ(*1) の営む書店兼図書室、シェイクスピア書店の貸し出し文庫から借りていたのである。冷たい風の吹き渡る通りに面したその店は、冬には大きなストーヴに火がたかれて、暖かく活気に満ちた場所だった。店内にはテーブルが配され、書棚が並び、ウィンドウには新刊の書物が展示されていた。壁には故人や現存の著名な作家たちの写真がかかっていたが、どれもみなスナップ写真のようで、物故した作家たちですらいまも生きているように見えた。
「シェイクスピア書店」『移動祝祭日』ヘミングウェイ
なんといっても、この書店が文学史上有名なのはジョイスの『ユリシーズ』を出版したことだろう。
そんな伝説的な書店も、近年映画等でも登場して観光名所となった。私が訪れたときも、他にも観光客が多くきており、とても落ち着いて本探しができる雰囲気ではなかった。
しかし、1階と2階の本棚を見ながら、あれもこれも読みたい、まだ世の中にはこんなに読みたい本があるのかとしみじみと感じた。特に2階は人も少なく、店主シルヴィア・ビーチが使ったとされる机やタイプライターなどが置かれ、書店というよりは書斎のような雰囲気が読書好きにはたまらない。
ソファに座ってピアノの生演奏を聴きながら読書、本探しができる書店。こんな書店が近くにあったら間違いなく通い続けるだろう。
以前ニューヨークのStrand Book StoreやメキシコシティCafebrería El Pénduloに行った時も感銘を受けたが、個人的にはこのシェイクスピア・アンド・カンパニーが書店としては一番だと思った。つまり、(いまのところ)世界一の本屋だと思えるくらい良かった。
帰りに数冊の本とトートバックをお土産にして帰る。
もし幸運にも、若者の頃、パリで暮らすことができたなら、その後の人生をどこですごそうとも、パリはついてくる。パリは a moveable feast だからだ。
ヘミングウェイ
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