iPhone 12 Proを購入したときに期待していたのは、Apple ProRAWというRAWファイルで写真が撮れることだった。
iPhone 12の発売後ようやく12月になってiOS 14.3のアップデートと共にApple ProRAWが使えるようになった。
早速実写テストをして試してみた結果、Apple ProRAWの使い方、Apple ProRAWを使用すると良いシーンがわかってきたのでまとめてみたい。
Apple ProRAWとは何か?
まず最初にApple ProRAWとは何か簡単に説明したい。
Apple ProRAWは以下2つのiPhone 12モデルで使用できるようになったRAWフォーマットのこと。
- iPhone 12 Pro
- iPhone 12 Pro Max
RAWフォーマットはJPEGなどの画像ファイル形式より多くの情報を保持しているため画像編集ソフトを使用してより柔軟性のある画像編集が可能となる。
例えば露出補正、色補正、ホワイトバランス補正などである。
具体的にはApple ProRAWは12ビットの色情報を保存しており、通常のHEIC形式の8ビットに比べると圧倒的な情報量が保存されることがわかる。
またiPhone 12 Pro/Maxの2機種で撮影した場合、スマートHDRやナイトモードで撮影した場合でもApple ProRAWに保存できる。
注意点としてはポートレートモードではApple ProRAWで保存できないことだ。
ファイルフォーマットはDNGになっている。DNGはRAWファイルのフォーマットとしては最も一般的なもので、ほとんどの画像編集ソフトで開くことができる。
Apple ProRAWの使い方
Apple ProRAWを使うにはiOS14.3にアップデートした後で設定画面から機能をオンにするだけ。
あとはカメラを開いて右上に表示されている「RAW」ボタンをタップするだけで良い。
撮影した写真はRAWというマークが表示されるようになる。ファイルフォーマットは先に述べたようにDNG形式になっている。例えばそのまま写真アプリで編集することもできるし、Adobe Lightroomなどの画像編集ソフトに読み込んで編集することもできる。
Apple ProRAWとJPEGの画像比較
では実際にiPhone 12 Proで撮影したApple ProRAWとJPEGの画像を比較してみたい。
どちらの写真もナイトモードにして三脚を使って撮影した。Apple ProRAWの方は画像編集ソフトの自動補正を使ってバランスを整えた。
こうして2枚の写真を比べてみると違いがわかるだろうか? 拡大したときにJPEGの方は暗い部分にノイズが多く見られる。それにシャープネスも非常に強く、個人的にはApple ProRAWで撮影して自動補正でクリック一つで補正する工程を入れた方が良い写真に思われる。
ファイルサイズはJPEG(HEIC圧縮)の方が2.4MBに対しApple ProRAWは31.6MBと約13倍ものファイル容量になった。
ちなみに、日中の外で風景を撮影してみて比べてみたが、JPEGとApple ProRAWで差は見られなかった。
Apple ProRAWで撮影すべきシーンとは?
以上の検証から、個人的にはApple ProRAWで撮影すべきは以下のような特殊な場面に限られると考えている。
- 暗所撮影
- 画像編集ソフトで補正やフィルターを強めにかける場合
実際、iPhoneのカメラレビューで有名なAustin Mannのレビュー記事を見ても、Apple ProRAWを使用すべきは「過酷な条件下」であると書かれてある。例えば極端に暗い場面、ハイダミックレンジの極端な場面(明暗の落差が激しい場合)、光源の色温度が複数混ざっている場合などという。
まとめ
Apple ProRAWを検証してわかったのは、iPhoneのコンピュテーショナル・フォトグラフィーのすごさだ。iPhone 12 Pro/MaxではJPEGでかなりハイレベルの写真が撮れてしまう。
RAW(Apple ProRAW)で撮影してわざわざ画像編集ソフトで補正して現像してもJPEGのクオリティを超えることは簡単ではない。
ただし、個人的にはスマホでRAWが撮影できてしまうことの驚きと、画像編集ソフトであれこれと補正を加えても破綻しない12ビットのRAWファイルは遊びがいがあると感じた。
ポケットに入れていつも持ち歩くiPhoneでRAWが撮影できるようになったことは、カメラ好きには衝撃的な事件だった。
DolbyVision HDRと合わせて、iPhone 12 Pro/Maxは写真と動画の両分野でハイクラスの一眼レフ/ミラーレスカメラ並みの性能を手に入れつつある。
このiPhone 12で追加された数々のカメラ機能のイノベーションは感動するし、最先端のカメラを使っている気分を味わえる充実感があると思った。