ブルガーコフ『巨匠とマルガリータ』の解説と読んだ感想

2022年ロシアのウクライナ侵攻のニュースを見ながら、私はふとブルガーコフのことを思い出した。

ブルガーコフはロシアを代表する作家だとは知っていた。

そこで以前から読みたかった『巨匠とマルガリータ』を読もうと思い、リサーチしていると、ブルガーコフはウクライナの首都キエフで生まれ、ソ連時代のロシアを代表する作家だと知り、その二重性に興味を持った。

そして『巨匠とマルガリータ』を読み始めてから2年後、ようやく読み終えることができた。

しかし、未だロシアによるウクライナ侵攻は続いている。

ブルガーコフと『巨匠とマルガリータ』について

ロシア(ソ連)の作家。1891年ウクライナの首都キエフで生まれる。1940年モスクワ没。大学卒業後に医師となったが、数年後医師を辞め執筆活動を開始。

『巨匠とマルガリータ』はブルガーコフの遺作となった長編小説。20世紀ロシア文学を代表する作品の一つと評価されている(百科事典マイペディア)

作者の死後26年を経て、1966年に発表され大きな反響を呼んだ。

革命後の現実を大胆な幻想的手法と痛烈な風刺精神によって描く。

『巨匠とマルガリータ』のあらすじ

ある春の日、悪魔ヴォランドとその一味がモスクワに姿を現わすとともに、雑誌編集長が市電に轢き殺され、それを目撃した詩人が精神に異常をきたすのを皮切りに、劇場関係者が行方不明になり、劇場の天井からは札束が舞い降り、贋札が氾濫し、火災が相次ぐなど、奇想天外な事件がつぎからつぎと発生し、モスクワの市民は混乱に陥れられる。収容された精神病院で、詩人は隣室の不思議な人物と知り合いになる。ユダヤ総督ポンティウス・ピラトゥスとヨシュア(イエス)を主題とした小説を書いたため、激しい攻撃を受け、恐怖のあまり原稿を暖炉に投げ入れ、愛人とも別れた巨匠である。この作家を「巨匠」と名付けたのは、その才能を信じ、愛する作品の完成を励ましつづけた夫あるマルガリータであった。巨匠の行方を探していたマルガリータはヴォランドとの契約で魔女に変身し、悪魔の舞踏会の女主人公役を演ずる代償として、巨匠と再会する。「原稿は燃えないものです」というヴォランドの言葉とともに原稿も蘇り、巨匠とマルガリータは永遠の住み家へと去ってゆく。  「小説のなかの小説」として長篇に挿入されている巨匠の書いた作品の舞台である二千年前のエルサレムと悪魔の一味に破壊される一九三〇年代のモスクワが対比され、豊かな構想力と奔放な幻想、風刺とグロテスクな手法によった人間存在と時代への深い洞察に満ちた作品

訳者あとがき

『巨匠とマルガリータ』を読んだ感想

読後に記憶に残っているのは、冒頭のモスクワの公園で突然に市電に轢き殺される雑誌編集長とか、首が転がるとかの冒頭。

巨匠が書いたポンティウス・ピラトゥスとヨシュアの物語。

そして悪魔の舞踏会の参列者の描写、の3つのエピソードだ。

作者の奇想と、驚くほどの想像力と描写力が面白かった。

隣にすわっていたのは、燃えるような赤毛で、 牙を生やした小柄な男で、糊のきいたワイシャツに上質の縞のスーツ、エナメルの靴、頭には山高帽といういでたちであった。派手なネクタイを締めていた。しかし、なによりも驚かされたのは、普通ならハンカチを入れるか万年筆を差している胸ポケットから、この男の場合、肉を食べつくした鶏の骨が突き出ていることであった。

ただ、心の底から面白いというよりは、やはり作家としてのブルガーコフを「評価」するための作家主義的な読み方を免れなかった。

在命中には評価されず、作品は刊行禁止され、劇作家として生きざるを得なかった作家の人生。ソ連社会を批判し、風刺し作品に昇華させる作家の姿が浮かんでくる。

『巨匠とマルガリータ』は作者が生きた政治・社会性を抜きには語れない。

時間と空間の概念を破壊し、幻想と現実を交錯させて、三〇年代のソ連社会の実体をあばき、それと同時に、狂気ないし非合理的なものによって支配されるロシアに固有な意識構造に鋭くメスを突き刺す。悪魔によって翻弄され、 嘲笑されるモスクワが恐怖の時代のあのモスクワと対比されていることは言うまでもない。

訳者あとがき