作家ティム・フェリスがセネカの本を何冊も人に配ったという話を聞いて、セネカを読んでみた。
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光文社の古典新訳文庫版には「人生の短さについて」の他2篇が収録されている。
「人生の短さについて」は74ページくらいの短さであり、翻訳も読みやすく、すーっと読める。だけど、内容は「残酷な事実」が書かれてあり、油断するとケガをする。
要約すると
解説を頼りに「人生の短さについて」を要約してみる。
人生は過ごし方しだいでいくらでも長くなる。だから多忙な生活から離れて、閑暇(かんか)の生を送ろう。閑暇とは、自分が本来なすべきことをする時間。英知を求め、英知に従って(賢者のごとく)生きること。過去としっかり向き合い、英知を手に入れて現在(いま)を生きること。
「人生の残りかす」
この本は若いときに読んだほうがいい。こんなふうに、グサリとくることを言われるから。
だが、あなたがそんなに長生きする保証が、どこにあるというのか。あなたの思い通りに計画が進むことを、だれが許したというのか。人生の残りかすを自分のために取っておき、善き精神的活動のために、もうなんの仕事もできなくなった時間しかあてがわないなんて、恥ずかしいとは思わないのか。生きることをやめなければならないときに、生きることを始めるとは、遅すぎるのではないか。
自分が死すべき存在だということを忘れ、五十や六十という歳になるまで懸命な計画を先延ばしにし、わずかな人たちしか達することのない年齢になってから人生を始めようとするとは、どこまで愚かなのか。p.25 – 26
ちなみに、「人生の短さについて」を書いたとき、セネカは48歳だったとされる。
読むタイミングがまずいと、かなりブルーになってしまいそうだ。だから、この本は若いうちに読んでおいたほうが身のためだと思った。エネルギーのあるときに読み切りたい。
「ほんとうの人生」を「今すぐ生きなさい」
それでは、どうやって生きるのがいいかという問いに、セネカはこう答える。
人生を長くする時間の使い方――未来に頼らず、現在を逃さず、過去と向き合う
英語の“seize the day”とか、最近の若者がよく使う “Be here, now”ということばにも通じる。
多忙な生活から離れ、ほんとうの人生を生きなさい
「ほんとうの人生」とはなにかまでは、哲人セネカさんは教えてくれない。ただ、セネカ自身はソクラテスのような「賢者」をモデルにしていたようだ。
賢者とは、自分だけを頼りとし、大衆の見解からは距離を置く存在です。
閑暇な生活を離れ、賢者を目指すのは私にはムリだ。だけど、「ほんとうの人生」を考えるきっかけにはなる。
残酷な本
古代ローマの生き方というのはかなり熾烈だったと思う。官職に就きたい、エリート主義、権力と裏切りと処刑…。
そんな時代に、あえて多忙な生活から離れて閑暇を求めることは、強い意志と決断が必要だったろう。
この本は残酷な本だ。答えは教えてくれないが、ご親切にも「残酷な事実」を突きつけてくれる。
若くてエネルギーのあるうちに読んで、自分なりに「ほんとうの人生」を生きるか。あるいは、こんな残酷な本は知らなかったフリをして、スルーするか…。
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