新しい時代の音楽の聴き方(PitchforkとSpotify&Apple Music)

SpotifyApple Musicなどのストリーム配信のおかげで、新しい音楽に出会う機会が増えた。ストリーミング配信各社はユーザーのデータベースを元にしたおすすめ機能を充実させている。

しかし、音楽好きな人はもっと新しい音楽が知りたい、世界でどんな音楽が進行しているのか、と思っており、Spotifyのおすすめ機能では物足りないという人も多いだろう。

この記事では、私が参考にしている音楽レビューメディアPitchforkについてご紹介したい。

Pitchforkのレビューをディスクガイドとして利用し、Spotify/Apple Musicで実際に聴くことでより広いジャンルの新しい音楽に出会う方法を説明したい。

Pitchforkについて

まずPitchforkメディアについて簡単に説明したい。

Pitchfork | The Most Trusted Voice in Music.

1999年にRyan Schreiber(ライアン・スクレイバー)が立ち上げた音楽レビューメディア。

アメリカ中西部のミネソタ州ミネアポリスで高校を卒業したばかりのライアンが、好きなインディーズ音楽を紹介するためにはじめたのがきっかけ。

はじめはサブポップやマタドールなどのレーベルから発表されているインディーズ音楽を取り上げていた。2000年代ごろからはメジャーな音楽も分け隔てなく紹介するようになった。

Pitchforkは毎日新譜アルバムのレビューをしている。1日に4枚程度のアルバムをフルレビューするというから、年間で1,500枚近く、10年で約15,000枚ものアルバムレビューがデーターベースになっていると考えられる。

年度ごとにその年のベスト音楽を選出したり、新人アーティストをいち早く取り上げてブレイクさせるきっかけになったりもしている。

また、毎年夏にシカゴで音楽フェスを主催している。ちなみに2018年の出演アーティストはこのようになっている。

Pitchforkの評価づけについて

Pitchforkはもともとライアン・スクレイバーがひとりで立ち上げたメディアだけあって、評価づけも独創的といえる。

たとえば、私の好きなEDMアーティストThe ChainsmokersのアルバムMemories…Do Not Open(2017)については10点満点中4.2点と厳しい評価。確かにこのアルバムはThe Chainsmokersが大ヒットを飛ばしたあとに発表したため微妙な曲も多く含まれており、4.2点という評価は納得できる。

The Chainsmokers: Memories…Do Not Open Album Review | Pitchfork

今度はPitchforkが得意とするインディーズ系の音楽のレビューを見てみよう。1990年代に活躍したオルタナティヴ・ロック~ローファイバンド Pavementの楽曲を集めたコンピレーション・アルバムQuarantine the Past (マタドール2010)。評価はなんと10点満点中10点と最高点がつけられた。

Pavement: Quarantine the Past Album Review | Pitchfork

やはりサブポップやマタドールから出される音源についてはやや評価が甘く、偏りがあることは否めない。しかしこの「偏り」がPitchforkのレビューのおもしろいところだ。

点数による評価など結局は個人の好みでしかないわけだが、Pitchforkは「偏り」のあるレビューをあえてすることで、独自の評価視点を持っているところが特徴だ。

皆さんの知っているアルバムがPitchforkでどんな評価がされているかPitchforkのサイトで検索してみると面白いかもしれない。

Pitchforkが選ぶ年度ベストアルバム

いまの時代、リスナーがすべての音楽を聴くことは不可能であるのだから、新しい音楽を網羅しているPitchforkのようなメディアによる評価はとても価値がある。

Pitchforkは毎年ベスト50アルバム、ベスト100楽曲などを発表していてこれが非常に便利。

先ほど述べたとおり、Pitchforkのレビューは「偏り」のある独自視点が混じっているため、他のメディアが取り上げないような作品やアーティストを高く評価している。

リンクとして、Pitchforkが選んだ年次ベスト100からトップ10のページだけをリンクしてみたので、まずはここからチェックして最近の音楽史をご自分の耳でたしかめることをおすすめしたい。

他のレビュー誌でもベストに選んでいるようなアルバムが並ぶ一方で、ときどきPitchforkならではの偏愛の一押しアーティストが入ってくるところが面白い。

2010年から2017年までの年次ベスト10

The 50 Best Albums of 2017 | Pitchfork

The 50 Best Albums of 2016 | Pitchfork

The 50 Best Albums of 2015 | Pitchfork

The 50 Best Albums of 2014 | Pitchfork

The Top 50 Albums of 2013 | Pitchfork

The Top 50 Albums of 2012 | Pitchfork

The Top 50 Albums of 2011 | Pitchfork

The Top 50 Albums of 2010 | Pitchfork

2017年の年間ベストアルバム rockin’on選とPitchfork選 比較

ちなみに、rockin’on誌が選んだ2017年の年間ベストアルバムとPitchforkが選んだアルバムを比較したので参考に載せておく。

ケンドリック・ラマーのDAMN.をどちらも高評価にしてあるが、明らかに評価が違っておもしろい。rockin’onは有名どころを揃えた感じで、Pitchforkはやはり「偏った」評価が特徴だ。

rockin’on が1位に選んだU2のアルバムSongs of ExperienceはPitchforkは10点満点中5.3点の評価。Ed Sheeranに関しては2.8点(笑)と厳しい評価。

もちろんどちかが正しいということではなく、評価なんて偏って当然だということか。

いずれ、2017年はケンドリック・ラマーのDAMN.がすごいのだ!✍️

まとめ

この記事ではPitchfork の特徴2つについて書いてみた。

  1. (インディーズ音楽よりの)偏っているが愛のある評価づけ
  2. 年次のベストアルバム選

Pitchforkやブログなど、(個人の偏りのある)評価を参考にしてSpotifyやApple Musicなどで聴いてみるというスタイルが、ストリーム配信が普及しつつある現代の新しい音楽の聴き方だと思う。

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