ジョージ・オーウェル『1984年』のあらすじと感想

『1984年』はイギリスの作家ジョージ・オーウェル(1903 – 1950)が46歳に発表した未来小説。Amazon.com選定の「一生のうちに読むべき100冊」の一冊などにも選ばれている。

『1984年』のあらすじ

舞台はロンドン。核戦争後に三超大国が対立する1984年の世界。この設定は最近のハリウッド映画的な設定でおなじみ。

未来の全体主義国家における主人公ウィンストン・スミス(39歳)の反抗の物語。

前半はSF小説的なストーリーを楽しめる。全体主義の世界で反体制・反権力への意識が芽生える。そして、やがて同志となるジュリア(26歳)という女性と逢瀬を重ねる…。

このストーリーや設定は映画『ブレードランナー2049』(2017年)新旧を彷彿とさせて、ワクワクする展開だった。

一方で、作品の後半はストーリーは期待したほどの展開をみせず、未来の全体主義国家の恐怖と絶望感が支配する。

感想

『1984年』には作品から抜け出して、現在でもその単語が使われている言葉がある。

ビッグ・ブラザー
独裁者
ニュースピーク
新語法
二重思考
相反する考えを同時に受け入れる状態
テレスクリーン
国民のあらゆる行動は監視下にある

こういった設定は概念化し、『1984』の発表時から今日に至るまでさまざまな政治的・社会的な文脈で引用されている。

常識では矛盾する概念すらも、全体主義に支配された「1984」的な状況では真実になりえることの恐ろしさを感じる。

例えば、作中の独裁党は「戦争は平和である」というスローガンを掲げる。その真意としては以下のように説明される。

真の恒久平和は恒久戦争と同じだということになるだろう。この事は――党員の大多数が皮肉な意味でしか理解していないが――実は党の掲げる「戦争は平和である」というスローガンの持つ隠された意味なのである。

愛読書にはならないが、『1984』が提示する未来像や概念はおもしろかった。

ふと気づいた点だが、近代生活における本当の特色は、その残酷さや不安定にあるのではなく、ただ単にその空しさやみすぼらしさ、冷たさにあるにすぎないのだ。

スウィフト『ガリヴァー旅行記』などの風刺小説の系譜に属しながら、さらに政治的な色を濃くした作品だった。最後は全体主義に屈したというよりも、肉体的な拷問に屈した感じもする。いずれにせよ「ビッグブラザー」が勝利する展開は恐ろしい。

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