「NETFLIXオリジナルの(ドラマ)シリーズはおもしろいが、NETFLIXオリジナルの映画は観るだけ時間の無駄だ」というのが持論だった。しかしこの映画を観て持論が少しゆらいだ。
その映画は『カーゴ』だ。
CARGO (2018年)。NETFLIXオリジナル映画。
世紀末+ゾンビ系の映画で、観る前は「どうせまたNETFLIXがやらかすぞ」と思っていた。
例えば、最悪のNETFLIXオリジナル映画『すべての終わり』(2018)は説明する価値もない本当に終わっている映画だった。『カーゴ』もまた、適当に不安を煽るだけ煽って、やり逃げする映画だろうと思っていた。
しかし開始早々、おっと思わせる設定に気づく。なんの説明もなしにすでに主人公一家は荒廃したゾンビワールドをさまよっているのだ。そしてあっという間に妻が死に、残された父(夫)と赤ん坊の娘が生き延びるためにさまよいはじめる。
余計な説明を一切排して、徹底して娘を生き延びさせようとする行動を描いたところが潔い。
『カーゴ』が他の世紀末映画、ゾンビ映画に比べてユニークだと思ったのはこんなところ。
- ゾンビが怖くない。むしろ共感をもって描かれている。ゾンビが攻撃してこない。
- オーストラリアの美しい自然を背景に撮影されており、ときおり見せるオーストラリアの大自然を観ていると、これは『ナショナルジオグラフィック』がつくったゾンビ映画かと思ってしまう。
- オーストラリア先住民の問題を絡めて社会的な視点もある。
- ほとんどCGを使っておらず、「ナチュラル(自然)な」映像に徹底している。また大げさなアクションもなく、ゾンビ映画にしては素材を生かした演出がいい。
- ゾンビ化した人間は冬眠するために暗いところを求める。また、樹液のようなオーガニックな(笑)血を流す。
- 主人公を演じるマーティン・フリーマン(『シャーロック』のワトソン役)も顔の表情で演じきった。
タイトルのCARGOは「貨物」や大きな荷物を意味するが、夫婦が懸命に生き延びさせようとする赤ん坊の娘のことを意味しているのだろう。
1時間44分の長さも飽きさせない程度にちょうど良い。
『カーゴ』は「ナチュラルさ」にこだわった、癒しのある「ナショナルジオグラフィック系ゾンビ映画」だった。
おすすめ度:⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
カーゴ | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト
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